1999.9.14(033)号
希望を抱き、恐怖に震え、畏怖にうたれる。究極の歓喜があり、耐えがたい絶望がある。サッカーという冒険には、人間のあらゆる感情が凝縮され、すべての営みが投影される。だから、刻まれた記憶は決して色褪せない。

見張塔からずっと。- たまには、フットボールの話もしよう。

さて、前回のロイタ一発で露呈した問題「ジョッピンカルのメンバーは意外と少ない」に続いて、今回、新たな問題が明るみに出た。
「ジョッピンカルは全然、弱い」

9月11日、札幌中学校グラウンドにてインターポンチ開幕プレマッチ、対uhbトップクリエーションFC戦が行われた。
トップクリエーションFCは、ジョッピンカルにとっては今季2戦2勝と、妙な相性の良さを持つ
貴重な相手だ。しかし、試合は立ち上がりからトップクリエーションのペースで始まった。
遅れてグラウンドに到着したBadDogは、ジョッピンカルエンドに偏った試合の様子を見て、方向を勘違いしたのだろう
「今日も押してるじゃないか、うちは!」と満面の笑みを浮かべた。

実際、フリーでボールをキープした最後列の森井でさえ、あわててロングボールでクリアしたほど、トップクリエーションのプレスは激しかったのだ。
ゲーム序盤でフリーにもかかわらず、何故、ビルドアップをせずにロングボールで返した!と、今日もキャプテン・ドゥンガ斉藤の激しい
炎のアドヴァイスがピッチに容赦なく響く。あまりにも激しいアドヴァイスに相手チームまでも凍り付き、一瞬の隙をついて、そのボールは大きくワンバウンド、そのまま相手ゴールに入ってしまった。
すぐさま、仲間の罵声は
炎のねぎらいに変更、「森井ナイスシュート!」

こうして先行したにもかかわらず、ジョッピンカルの得点はこれだけ。終わってみれば1-6と怒濤のスコアで完敗した。

今回はゲームの内容について多くを語らない、敗因の正確な把握と課題、対応策を考えることがフロントと我々ジャーナリストの役目だ。

監督のインタビューを試みる前に、話を解りやすくするために、各ポジションの役割を簡単(実は半分以上のメンバーが知らない事が判明した)別ページにて説明しておく。


榎木津礼二郎、定例記者会見より抜粋。

やは。まず、敗戦の原因をどう受け止めているのでしょうか?

その前に、まず、この試合に限ったことだけを整理しておくと、今回は、前回サボった罰として加籐選手を無理矢理キーパーにする、という光成の強い要望を素直に聞いたのが失敗だった、あれでチームのリズムは崩れた。相川選手がゴールマウスにいれば結果は違ったはずなのは明確だろう。ただし完敗なのは変わらない、0-3くらいが順当なスコアだが。

前回、3-0に買った相手なのに、順当でも0-3なんでしょうか?

少し弁護しておくとトップクリエーションの今回のメンバーは前回とは違う。かなり強化されたのは明白だ。今までのトップクリエーションは一部の選手に玉を集めすぎていた、そこだけケアすれば良かったのだが、今回は(トップクリエーションは)玉の出所が多く、10番の他にも25番などキープできる選手も増えた。非常にコンパクトなライン、大きな左右への展開など、来るインターポンチでは充分、優勝もねらえるチームだろう。

現在6連敗中のジョッピンカル札幌が、もう少し勝てるようにはなるのでしょうか?

答えはYesでありNoである。
まず、そもそも勝つため(リーグ登録予定も無し)に選抜されたチームでない事、そして、集まったメンバーがみんな試合に出られるようにする、という草サッカーの暗黙の掟がここにも足かせになる。
ただし、これだけは譲れない線がある、サッカーを楽しむことだ。
いくらスコアで負けても、その日のサッカーが楽しければ、それでいいのだ。最近、楽しいサッカーは、できていないと思う。

今回のゲームも終盤、キャプテン・ドゥンガ斉藤の激しい怒号がピッチに容赦なく響いていました。あれが今のチームの状態を表しているのでしょうか?

あれは、炎のアドヴァイスであると同時に戦術でもある。試合開始前だけ、コーナーキックの練習を繰り返してもテクニック的に上手くなるはずがない。だとしたら、あとは気合いで勝負するしかない、というキャプテンの戦術はシンプルだが高度で正しい。

メンタル面が一番重要でしょうか?

身体がついていかない限りそうでしょう。あとはできることがあるとしたら、戦術理解とポジションの約束事の確認。アルゼンチンの諺に「良いときは、ちょすな!」というのがある。逆に考えれば悪いときには形から触っていかなければならないということになる。いま予定しているのは基本フォーメーションの変更だ。

現在の3-5-2システムは、98ワールドカップで岡田監督が採用した守備重視のものではない。
そもそもこのフォーメーションを採用した由縁は、草サッカー上、できるだけ多くの人に攻撃に参加させてあげるという英断であった。当初から守備にはかなりの負担を強いていたが、6点入れられても5点入れられるチームになれば良いと判断したわけだ。
上:一般的な3-5-2
下:JPC 3-5-2システム
しかし、中盤でこぼれ玉が拾えない問題(根本的にはトラップが不得手なのだが)が深刻な問題となってきた。
守備の人数が少ないのに中盤の人数が足りない、アウトサイドのプレイヤーはボールが逆サイドにあるときは、もっと中に切れ込んで欲しいのだが、タッチライン上に居る(含むFW)ことが多いので攻撃時にも中が薄いことが度々ある。
一番、辛いのはWBプレイヤーがWGプレイヤー的に機能している(戻れない)ので、自軍両サイドのディフェンスに左右センターバックが開きすぎになり、たびたび1対1の場面を作ってしまうことだ。そのへんの修正は、せざる得ないところまで来てしまった。

本来、トップクリエーション戦の3セット目で新しい布陣を試して見るつもりだった筈なのでは?

その予定だったのだが、3セット目で遅れてデコッパチ選手が久々にやってきた。morii 1号&2号、デコッパチと並べたところで、3バックでいけるならそれに越したことはないと試してみたのだが、サイドを多用してくる相手には、やはり辛い事が解った。

これからのジョッピンカルはディフェンスの枚数を増やす、という事なのでしょうか?

それは、先発メンバーによるだろう。選手によって適正は違うからだ。加えて、これまでSBというポジションは無かった。いますぐにサイドバックができるであろう選手は3人しかいない。とりあえず一度、試してみたい。

インターポンチネンタルカップは 4-4-2で望むと?

いや、4-5-1になると思う。
通常の攻撃的な意味での4バックではなくスペースを埋めるための4バックであるからFWからひとり廻さざる得ない。
図を見てもらえば解るように、中盤の5人は今とそう変わらない。機能するかどうかは、両サイドバックの理解度、そして今まで以上の運動量を持って欲しい両ウィングだ。
草サッカー界においては、ディフェンダーをやりたがる人は少ないのだが、その代わり、FWに比べて出場機会が増えるのは当然だ。逆にFWは今までより出場回数は減るかもしれないが、限られた時間で完全燃焼するつもりでいてほしい。

フラットな3バックや3-5-2はもうやらないのですか?

4人での守りかたにも馴れたら、最終的なベストな布陣は、3-6-1だと思っている。ゲーム中の戦術判断は中盤の斉藤&Gパンに任せ、彼らがDFラインに入ったりトップにあがったりすれば、フレキシブルに4-5-1、4-4-2、3-6-1、3-5-2、3-4-3と形を変えていける。
余談だが、個人的には、いい選手を中央に集めたサッカーは、もう前時代的なものだと思っている。これからのサッカーは、アウトサイドの選手がキーポイントだと思う。

集まった順番、先発システムは、撤廃するのですか?

それは、時間にルーズなジョッピンカルには、いい風潮なんで残したい。ただしインターポンチカップについては、4試合の先発メンバーはある程度決めて望む。そして交代枠はフルに活用するつもりだ。
ジョッピンカルには大きく分けて3つのタイプの選手がいる。サッカーがプレイすることも見ることも好きな選手、プレイすることだけが好きな選手、そのどちらでもない選手。プレイだけにこだわる選手で出場機会が少なくなる選手はつまらないかもしれないが、最近5、6試合のような(キープ率が低いために)ボールタッチの少ない試合じゃ、サッカーを楽しむことすらできないからね。

最後に集まってくれた大勢のサポーターに向けて一言。

昔は、奥さま会や大勢の子供たちでスタジアムは溢れんばかりだったが、最近は誰もきやしねえ。おおかた、見ても面白くないことにやっと気がついたのだろう。そういえば、昔はジョッピンドールズなんてのもいたなあ。インター杯も時差の都合で午前7時からだしね。

どうもありがとうございました。


以上が記者会見の様子だ。
明日はありすの運動会だから帰る、と言い残して榎木津礼二郎は席を立った。
我々が想像する以上にフロントの趣は厳しい。ただし、なにも変わらない予感も多々ある。

それが草サッカーだから。

ロイタ一発・共同通信

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