古い船を動かすのは、古い水夫じゃないだろう
このタイトルがどこから来てるか解る人はメンバーの資格があると言える
オーソンウェルズが想像した1984には、ならなかったように、A・C・クラークが想像した2001年も実現しなかった。そして、2002年、新生ジョッピンカル1969が始動した。
ジョッピンカル1969は昨年、素人親父の出場機会を確保するために、生年月日が1969年以前のメンバーで組織されたキワモノユニットだ。
しかし実際は体力的に前半でバテてしまい、後半は若者たちがフィールドを埋め尽くすというのがほとんど。しかもジョッピンカル新札幌オレンジユニを共通に使うため、対戦相手にとっては、1969相手で始まったはずだが、後半はどう見ても高校生じゃないか、という苦情も殺到した。JAROからの突き上げも厳しい。
一年間のテストケースを経て、ワールドカップイヤーの2002年、1969を再改訂した。
手っ取り早く言うと、新生1969は、ジョッピンカル札幌とジョッピンカル新札幌の親父選抜合同チームである。
いわば連邦軍のチーム、想像しがたい人はユーゴスラビアとクロアチアがまた一緒になったような涙のチームだ。
併せて今年、ユニフォームも新調する事にした。背番号も一新。
今までのようなオレンジユニ主導でいくとオレンジユニを持っていないメンバーは肩身が狭い思いもするかも知れないからだ。新たに横一線、上も下もない。(byホッカイドウ競馬)
古い船を動かすのは古い水夫じゃないだろう。新しい海に出るのだから、新しい船にまた乗り込むのだ。
新ユニフォームは黒-黒-オレンジ。
第一期オーダーに間に合わなかったメンバーも黒パンツなら両国家のチームとも持っているはずだし、黒いビブスも新調した。黒を着こなせるようになって、初めて大人だ。
この連邦チーム、記載漏れした人がまた参加し辛くなるおそれがあるため、新たにメンバー表は作成しないが、そうそうたる渋い顔ぶれである。
チームキャプテンは、本家ジョッピンカル札幌、最年長のレッチリこと奥田メンバー。副キャプテンを分家ジョッピンカル新札幌の最年長、ジャンルカメンバーを任命。二人併せて百歳。
ただし、両名とも現在は復帰を目指して療養中。我々は彼らを精神的支柱として戦い続けるのだ。なんせ年取ると回復に時間がかかるんでね。じきに帰ってくるから待て。
新生1969は口開けの試合は、5月11日、もりもりオールスターズ戦。
元、大同ほくさんソフテックグループのこのチームとの伝統の一戦に、本家ジョッピンカル炎のキャプテン、ドゥンガ斉藤メンバーも帰ってきた。そしてGK相川メンバーをフィールドプレーヤーとして起用するために、ポストマンまっちゃんメンバー、加えて本職は広告業界という事で本家枠としてファンタジスタ、ロベルトメンバーを特別登録した。
ベンチワークはシンプルだ。
先発メンバーさえ決まれば、交代は各自、積極的に行ってくれる。さすが大人。
決して出場をアピールしようとしない。
それどころか、ビブスを脱いで、お互い、どうぞ、どうぞと譲り合う。今にもベンチで名刺交換でも始まりそうな勢いだ。
前の方から高年齢順、という先発メンバーで試合は始まった。
35歳程度じゃストッパーというほど1969の敷居は高い。
結果は先にお知らせしたとおり、2-8の惨敗。
しかし実際のゲームは奥深かった。
3点を先制された後、前半ロスタイムにペナルティエリアで相手をつい羽交い締めにしてしまい痛恨のPK。
それをキーパーまっちゃんがぎりぎりまで待って見事にセーブ!身体で止めた!
何事も勝負というものは、ぎりぎりまで我慢した方が勝ちなのだ。「先手必勝!」なる言葉が嘘っぱちである事は君たちが大人になれば解る。
止めた!ペナルティキックは、ぎりぎりまで我慢したまっちゃんの足に弾かれた。
落胆する、もりもりオールスターズのキッカー、歓喜に駆け寄る1969メンバー、
の身体に当たってゴール。あっさり追加点を許した。
後半も、もりもりオールスターズの低いクロスが、ペナルティエリアの真ん中で黙って戦況を見つめていたみっちゃんの身体に当たりオウンゴール。
この2点の自殺点を考えれば、2-8の惨敗も、4-6の惜敗という考え方ができないだろうか?
試合終了後、もりもりオールスターズの代表が駆けつけてきた。
「今日は人数が足りなくて2〜3人、若いメンバーが居たんですよ。すいません」
とわざわざ気を使って頭を下げに来てくれたのだ。
ああ、美しき大人のサッカーよ。
しかし残念ながら我が連邦軍のチームには惨敗に落胆するようなメンバーは居ない。
1969の第2戦は5月19日、対GWSボンバーことグラスウール札幌。
対戦オファーで、相手は是非、1969で。と指名してきたこちらの内情を知り尽くした流石ライバル。
ただしグラスウール札幌もこの日は、リクリエーションモードでチーム創設期の高年齢メンバーでやってきた。これまた流石ライバル。
↑このまったりとした様子は、なにも試合が中断している訳でなく、ばりばりの試合中のフィールドの様子である。画面下手奥のローリーは、なにも途方に暮れて歩いているのでなく、サイドを駆け上がっているつもりなのだ(当社比) |
お互い、あがったらあがりっぱなしで戻れない親父のため、恐ろしく高い最終ラインでのせめぎ合いは続いた。
しかし試合は一方的に0-5の大差。
終盤、審判の社交的なジャッジにより、明らかなオフサイドを見逃してくれた、ルーメンバー(37歳、90Kg)が夢の独走、憧れのキーパー1対1!
しかし肝心なところで足がもつれてしまい、ボールはシュートできないまま、コロコロと相手キーパーへ、無念。
このままでは週明けからの仕事にも響くだろうと終了間際、相手ペナルティエリアで榎木津メンバー(今年でなんと40)ボタン4つ同時押しの故意のダイビングを試みた。
笛!恩赦のペナルティキックを勝ち取ったのだ。
それまで沈黙していたBdメンバー(37歳、159cm)が勝手にボールをセットして漁夫の利を得ようとしているのを制して、キッカーはルーメンバーを指定。
無念を晴らさせようという大人ならではの炎のまごころだ。
「ポストに当てちゃいますよ」とはにかみながらボールをセットするルーメンバー。
息を飲む早朝のスタジアム。
弱々しいキックはキーパーの真っ正面へ。
相手ゴールキーパーは非常に申し訳なさそうに止まりそうなボールを拾い上げた。
思ったところにペナルティキックが跳ばない。
この時、ルーメンバーは94年アメリカワールドカップのロベルト・バッジオの姿に自分を重ねていたであろう。
試合終了後、すっかり接待されちゃったね、と相川メンバー(45歳)
大人として、すすきのでも接待返しでもするべきか、との炎のお返し案もあったが、まあ、5点も上げたからいいだろうと大人ならではの、炎のうやむやに葬り去った。
たった2試合で失点13。
さぞかし辛い思いをしているだろうと想像してくれる方もいるかも知れないが、大きな間違いだ。
我々はサッカーを純粋に楽しんでる。
今日も相手チームに喜んでもらえたかな、と思えば嬉しい。
あらゆる束縛や仕事のプレッシャーや社会的責任や人間関係、家族や子供からも解き放たれたささやかな大人の時間がある。この素人だらけの親父チームで、マゾヒスティックにサッカーが楽しいと思う。
もし、あなたの周りで素人ながら年甲斐もなくサッカーをやってみたい大人たちがいれば、チームを作るがよい。
我々、ジョッピンカル1969が相手になる。どこへでも行こう。
そしてサッカーの喜びを存分に感じさせてあげる事ができるだろう。
サッカーは集団競技だが、我々は個人の集まりだ。
だからこそ、誰よりもそれを楽しみたいと思うべきである。
現在、噂を聞きつけた、したたかな草サッカーチームたちから、1969への対戦オファーが殺到している。
年長者を敬う心配りも時には大切だと、思うけどなあ。
じょっぴん共同通信