アルファ・ロメオ〜快楽と美学の血統

アルファ・ロメオ〜快楽と美学の血統

私が永きに渡って乗っていた車がフレンチブルーのシトロエンBX88年式

この3月に廃車になった。この手の高年式フランス車が何故廃車になったのかは想像にたやすいだろう。廃車にした、のではない廃車になったのだ。

そこで私は身の回りの様々な車好きの友人に、この次に私は、はたしてどんな車を選べばいいのか、相談して廻ることになる。

私は車に疎く、その手の雑誌やカタログに書かれているスペックなど意味不明の記号にしか映らない。ハイブリッド?エコロジー?エアバック、ABSもなんやそれ?安全だったら死んでもいい、って感じか?

なにしろ、私は車には疎い。それは、私が料理についてはお湯を沸かす程度しかできないのと同じくらいに疎い。それでも大抵の男の子は年齢に違わず車が好きだ。初対面の大人同士でも車の話題なら延々と続けられるくらい、少年のような意味合いで好きなのだ。

マイカーを選ぶとき果たして人はどのくらいの時間をかけて悩むのだろうか?
もちろん、大きな買い物である。かといって「マイカー購入は住宅購入の次に大きな買い物」というのは、間違いである。大抵の人が自動車より多くの金額を支払わなければならないのは、7〜800万は掛け捨てになる生命保険だ。とりあえず、棺桶に片足つっこんだ買い物ではない。車は所詮、生活の足でしかなく、性能より機能が優先である事には間違いはない。

最も車に詳しいと思われる友人は、50万以下の中古車を3年ごとに乗り継ぐか、安心ビッツを117万で買って10年乗る事のどちらかが、もっとも正しい、と説いた。ただし本人はそのどちらも選んでいない、そう、解っていてもそれができない、見栄という厚底の靴を履くのと同じだ。

私が条件をつけるとすれば、シトロエンに愛着があっただけに、もうフランス車は乗らないと誓った事であった。そうしてやがて、選択肢はドイツ車とイタ車に絞られてきた。

同じ条件であれば、ドイツ車、あるいは日本車を選んだ方が、絶対的な安心と信頼を手に入れることが出来るだろう。しかしそれは、男として女を選ぶときと同じだ。

イタ車の魅力は決して安心させないことだ。

どんなに愛情やメンテを怠らなくても、きっと裏切ってくれるだろう。それがイタ車だ。オーナーに絶対の信頼と安心を与えてくれるようでは、イタ車としては失格なのである。

しかもドイツ車に負けないくらい高い。たとえ、どんなに解っていても、男として生まれたからには、イタ車のような女性に振り回されてみたいものだ。ついでに一回くらいアメ車にもお願いしたい。

今の私にとっては、そう解っていながら、ドイツ車や日本車を選ぶことは、何も選択しない立場を選択すること、と同じなのだ。

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そうして選んだ車がイタリアのじゃじゃ馬、アルファ・ロメオ156V6-Q-Systemである。

アルファ・ロメオ。なんとも官能的な響き。嫌な男度120パーセントアップ。アルファという記号的なクールさに、ロメオという切なく古典的な響き。

m5002m.jpgイタ車の魅力は、伊達男の快楽と美学の血統だ。

つまり何事もまず形から、のデザインの国イタリア。魅せる事を前提にデザインされている エンジン。見栄としか思えない260・まで刻まれたスピードメーター。ドリンクホルダーなど付けることを許さないようにわざとデザインしているとしか思えないシンプルで洗練されたコンソール。

ただし、車窓から腕を伸ばして運転しているだけで時計を盗まれる国-イタリアだけあって、盗難防止のセキュリティーはかなりのものだ。

ICチップ埋め込みのキーやなどは、まさにカテナチオ。GTVに至ってはトランクオープナーは床下をどんなに這いずり回っても見つからない、グローブボックスの奥にある始末。深夜のパーキングでカーナビなど盗まれる心配もない、だってついてないしな、そんなもん。

イタ車のドイツ車の違いは、セリエAとブンデスリーグのフットボールスタイルの違いなのかもしれない。
イタ車にはファンタジスタの香りがある。つまり生まれながらの華だ。
生まれながらの華-これがファンタジスタには不可欠なものだ。
容姿の事ではない、先日のユーロ2000、ハゲのジタンにも、華があった。

華、というのは快楽に近い。ジタンがボールをトラップするとき、何人もの相手ディフェンダーに囲まれるとき、彼本人でさえ、至上の快楽を感じていたのではないだろうか?
ファンタジスタという意味合いは非常に説明がしがたいが、日本で言うと、中田ではなく小野だ。

話を戻すと、日本ではメルセデスに乗る人のことを、や〜さん、と呼ぶらしいが、アルファ・ロメオに乗る人のことは、Alfistaアルフィスタと呼ぶらしい。おお、ファンタジスタみたいだ。

念のため言って於くが、これはイタ車ばんざい!といった類の話ではない。人間はどこまで自分の欲望に忠実に快楽を求められるのか、そして誰もが心の中に持っている丸長へのオディプス・コンプレックスである。

人それぞれにとって今回のイタ車に相当するモノが多々あるだろう。物質にとどまらず、人の気持ちもしかりだ。

苦労や大きな借金を抱えることで不思議と快楽を感じることもできる。だから、安くて性格がよくて、ついでに量も多い娘より、高くて美味くて(上手くて)毒がある--、河豚のような娘に魅せられる、それがロメオの血統なのだ。

要は、クルマ買って、うれしいのさあ。

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「アルファ・ロメオが通り過ぎるたびに、私は帽子を取りたい気持ちになる。」
-------自動車王ヘンリー・フォード

Posted by enokizu at 2000.10.12 | トラックバック
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