僕がずっと若い頃は、とんでもない真夜中に急に電話しても怒られない異性の友人が何人居るかという、今から思えば、なんとつまらない事が、ことさら重要だった。遙か昔だ。
悩んでいたり煮詰まっている時に誰かに相談する事はストレス解消にはなるが、決して明確な解答が得られるのを期待している訳ではない。話す事だけでずいぶん楽になれるし、実際に言葉にするうちに自分自身で気がついて解決したり「こんな些細なことだったなんて、なんて不毛だ」と眼が覚める場合もしばしばだ。
問題は誰に相談するかという事だろう。いくら酒の上の席での話といえども、簡単に他人に相談できない訳ありな事情であればなおさらだ。そんな時、なんでも話せる異性の友人の存在は助けになる。つか、ずいぶん楽だ。
男女間に友情は成立しないというのが通説だが、友情とは違う微妙な距離感を保てる間柄。世の中で多いのは、やはり一度苦楽を共にした男女がそういう関係になることが多い。元彼とか別れた夫婦とかがその類だ。
別れた恋人とだらだらと関係を持つ事を忌み嫌う人(特に女性)も多いが、それぞれが通り越したところでよい距離感を保てるのならば貴重な存在だ。当人達以外から見れば、それは確かに痛い関係でも、煮え切らないでいることに妥協する「友達以上、恋人未満」(死語)とかいう、結局のところ幾らでも代えが効くどーでもいい関係よりかは、ずっとマシだ。そういう相手に深刻な相談を投げかけるのは、その一線を越えてもいいと思う時だけ。例外はない。
一度苦楽を共にした戦友のような男女からは、不思議と事情を知らなくても、それを感じさせる安穏とした空気が伝わってくるときもある。架空の戦場で戦った同士なのだ。(おおげさな)とはいえ、35くらいを過ぎると結構、成立しちゃう人が出てくる、これがまた。
まあ、なにも、積極的にそんな関係を勧めているわけではない。もし、幸いにもなんでも話せる異性の友人を持っている人は、そういう相手を大切にしよう、とかそんな話でもない。
感謝しよう、それぞれの中だけで。