1999.9.1(032)号
希望を抱き、恐怖に震え、畏怖にうたれる。究極の歓喜があり、耐えがたい絶望がある。サッカーという冒険には、人間のあらゆる感情が凝縮され、すべての営みが投影される。だから、刻まれた記憶は決して色褪せない。

犬は吠える、そしてキャラバンは進む。

路上で発狂し、キリストとなって死んでいったニーチェよ、ピース!メスカリンの幻覚の中で「嘔吐」を書いたサルトルよ、ラ−ブ!。狂おしく暑い夏は終わった、真夏の3連戦を振り返ろう、やは。

8月14日、前田森林公園で行われたサントリーシリーズ、対サントリー札幌支社FCとの2連戦。

この日、集合したメンバーは8人だけ。(特筆に値するので明記する、到着順だ。光成、相川、植田、奥田、遠藤、鈴久名、藤川、森井)この日を楽しみに何度もメールをくれたサントリー札幌支社FCの 鈴木 秀樹選手を始め、相手チームに対して申し訳が立たなかった。
ただし、不参加の選手達を一概に責めてはならない。ジョッピンカルの基本理念は
「家族を大切に」お盆の為、帰省した選手、家族キャンプに出かけた選手よりも、第三子が生まれたばかりで本来付き添っているべきの光成が今回一番乗りしたことが責められるべきである。問題は、帰省の為、炎のキャプテン、ドゥンガ斉藤が来ないことを知って、そっとサボったしたたかな若者達である。

さっそく、ベンチではいつもの携帯電話によるおともだち大作戦を指示、同時に見せかけだけの頭数合わせのために当日、40度の熱にうなされて自宅で伏せていたBadDogを強引に呼び出し、置物としてベンチに座らせた。(まもなく彼は「あまりに辛くて見ていられない」と言い残し帰路に就いた)
さらに榎木津礼二郎は、前田森林公園内で家族でボール遊びにいそしむ小中学生の兄弟を、ご両親を説得してその場で
現地スカウトそれでも頭数が揃わず、相手チームから選手を借りての申し訳ない試合開始の運びとなった。

キックオフは、灼熱の太陽が燃えさかる午後2時、気温は80度を超えた。
試合内容について書くべき事は特にない、この日現地スカウトした中学生がチームの中で
一番機能した、という事くらいか?結果は、0-4と2-4の完敗。こちらの得点はサントリー札幌支社FCからのレンタル選手の独走によるもの(都合、記録はオウンゴール)とGINZOの右からのセンタリングがキックミスで間違ってそのまま入ってしまったもの。
暑さは今期最高、ハーフタイムが終わっても誰も日陰のベンチから立ち上がろうとしなかったくらいだ。本来の目的である、
勝敗よりもサッカーを楽しむこと、を微塵にも感じることができず、ただ辛く、暑さとキャンプに負けた一日であった。

続いて8月28日、同じく前田森林公園にて大地蹴玉団TERRA F.Cとの試合。6月12日の初顔合わせでは、内容の差をかろうじて縦ポンサッカーで引き分けに持ち込んだ相手である。この日は、あらかじめ引き分けの場合はPK戦により決着をつける申し合わせができていた。
集合時間は
魂の時刻、午前五時。堅気の人にとっては辛い早起きだが、業界チームジョッピンカルにとっては夜の続きで楽な時間だ。前回、灼熱の太陽に苦しんだことに比べれば夢のようなコンディションだ。

この日フロント陣は、同日(時差のため日本時間では29日)ベネツィアでセリエAデビューを果たす名波浩にぶつけて、マシンガン・ヤスヨン38°のトップチーム昇格を指示した。前回の深刻な人数不足の不安もあって、立ってる奴はハムでも使え、ということだ。それでも集まったのは、12人がせいぜいだった。

立ち上がりのフォーメーションは、攻撃的3-4-3。右のアウトサイドをBadDogで行くか、ヤスヨンで行くか意見を求めたが全員一致でヤスヨンを先発させた。戦術的理由はただおもしろいから、だけではない。
案の定、前半は、ボールを怖がって逃げるばかりのヤスヨンの右アウトサイドに広大なスペースが生まれた。作戦通りであった、右サイドに大きなスペースを作り、相手にあえてそこを攻めさせながらも、一発のカウンターを狙うという、
矢吹ジョーの両手ぶらり戦法をヒントにした高度な戦術である。しかしこの作戦は前者のみが、ただ機能した。

後半、ヤスヨンを下げ、BadDogを入れるとバランスは崩れ、立て続けの失点。さらにベンチは、負傷した鈴久名に変えて、この日、たまたま試合を見に来ていた榎木津ありすの幼稚園の先生、つぶやき(通称)をディフェンスラインに投入。しかし時遅く、気がつけば、もう何点入ったか解らない状態。じゃあ今日は2-2のドローと言うことで、とTERRA F.Cに炎の提案。しかし残念ながらしっかり覚えていやがって、0-6とやられまくりゲームは終了した。

もうすでに決着をつけるどころの騒ぎではないのだが、エキシビジョンということで、最後に10-10のPK戦が行われた。関連記事あり。
最後は女性キッカー同士の対決となった草サッカーならではの顛末は、6-4でジョッピンカルに軍配が上がった。気をよくしたJPCフロントは、これをゲームスコアに加えさせてくれと懇願したが、それでも合計6-10で負けは負け、で因縁決着マッチは、誰もの
予想通り大地蹴玉団TERRA F.Cの完勝で終わった。

翌日8月29日は 屯田西公園グラウンドにて、春から調整を続けていた初顔合わせ、Over 30&家庭持ち親父対決、FCビースト戦だ。

このカード、ずいぶん前からオファーや調整を続けていたのだが、FCビーストは、サッカーよりも夏は家族キャンプや海を優先する、といった尊敬すべきベテランならではのしたたかなチームだ。
このFCビースト、平均年齢はJPCと同じかやや下回るくらいで、好ゲームが期待されたが、蓋を開けてみれば、圧倒的なフィジカルの強さにアウェイならではの洗礼を受ける。坊ちゃん育ちの
もやしっ子揃いのジョッピンカルにとっては、この日絶好調だったキーパー相川とそれを上回る神懸かり的なセーブをみせたゴールポストが頼りであった。
この日の集合人数は12人。ただし昨日、前田森林公園にて帰り際に「明日は7時だからね」と光成に命令されて呼び出された
つぶやき(通称)を含めての人数である。

夏の三連戦を締めくくる試合は、0-3で終わった。

さて、今回の三連戦から我々は何を得たのだろうか?

手っ取り早く説明しよう。ジョッピンカルのメンバーは以外に少ない、ということである。
一時期は30人を越える大所帯だったものの、新チーム、ヘモグロビンの発足、
祭りがあれば町から町へ、の大忙しの映像記録の4人のメンバー、その他、埋め草的なメンバー表を見て解るように(試しにこの人は来るだろう、この人は来ないだろうな、と数を数えてみたまえ)今後もしばらくは、12、13人程度の集まりが続くことは予想できる。
もっとも、人数は11人以上居れば、それでいい。ただし、草サッカーチームとしては、できるだけ多くの時間プレイをさせてあげたいものの、交代のプレッシャーがないダラダラとしたプレイや緊張感のない雰囲気は、そのままチームの状態はもとより日常、すなわち札幌の
映像業界全体にまで蔓延する。
だからといって、欠席者を責めるのも違うし、単純にメンバーを増員すればいいという訳ではない。
問題はもっと深いところで水底に沈んだ月のように鈍く輝いている。

人間は考える葦である。
しかし、悩みを抱えた世界中の少年少女よ、心配しないで。

犬は吠える、そしてキャラバンは進むのだから。

ロイタ一発・共同通信

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