1999.7.20(027)号
希望を抱き、恐怖に震え、畏怖にうたれる。究極の歓喜があり、耐えがたい絶望がある。サッカーという冒険には、人間のあらゆる感情が凝縮され、すべての営みが投影される。だから、刻まれた記憶は決して色褪せない。

三者三様の7.18 無頭の鷹 SCENE 03 text by - Reijiro Enokizu

その頃、私は青山プレジデントホテルのラウンジにいた。クラブの存亡を賭けて、
政治的工作のために一人で動いていたわけだ。

まず、ハウス食品が正式にJPCのオフィシャルスポンサーとなった。
8月から発売される
「とんがりコーン・ジョッピンカルパッケージ」の最終的な詰めを行っているところだ。この小中学生ターゲット拡大を狙った新商品、お店で見かけたら、是非、積極的に購入して欲しい。

次にJPCは、正式にNTTのISDN特約代理店業務も行うことになった。もちろん今、オンエアされている何処にオチがあるのか解らないTVコマーシャルもジョッピンカルメンバーたちが、眼から血を流しながら製作協力したものだ。
具体的には、みなさんの知り合いで自宅の電話をISDNに切り替えたい方がいらっしゃったら、是非、こちらまで連絡をいただきたい。微々たるマージンが入る仕組みだ。この売り上げは、わっしょい募金として、一部の
恵まれない貧困女優性格の不自由な絵描き達に還元されるだろう。

そんなわけで、私は7月18日のホームレス・リベンジマッチの詳細は知らない。
ただし、結果は安易に予想できる。点差が幾つであっても、それが現実だろう。一度、悲願の勝利を果たした相手に続けて勝てるほどJPCの精神的フィジカル面は鍛えられていないことは、よく解っている。ましてや、私、榎木津礼二郎不在のJPC、カポーティが生きていればこう表現するだろう「無頭の鷹」

打ち合わせが終わり、ホテルのバーに場所を移した頃、「奥、お役は奈々子汚し」でお馴染みの携帯電話が鳴った。頼んでおいた密偵は、終了した試合のスコアだけを私に告げた。

JPCでなく、同日、行われた義兄弟チーム「ヘモグロビン」vs「uhbトップクリエーション」の結果だ。
1−10の
屈辱的大敗。私は身体の一部に同じ様な痛みを感じることができる。

折しも東京も同じように雨が降り始めた。

「ヘモグロビンが、3-0でuhbトップクリエーションに完勝したうちと闘ったら、30対1でJPCの勝ちだな」と、どこかからデコッパチのほくそ笑むような声が聴こえたような気がした。
勝敗、スコア、得点者、そんな事より、相手よりできるだけ多く、サッカーを楽しむことを、どうか忘れないで欲しい。ジョッピンカル札幌は
文化系倶楽部なのだから。

オリオン座のそばで炎に包まれた攻撃型宇宙船。タンホイザーゲートの中、闇の中で輝くレイザービーム。そんな瞬間と同じように、ただの記録、そんな記憶はいつか消える。

この雨のように。

涙のように。

その時がきた(ここで鳩が、ばたばたって飛んでいくところがいいんだよ!)

 

ロイタ一発・共同通信

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