1999.6.7(019)号

Road To Nowhere

伊達選抜草サッカーチーム、ジョッピンカル札幌の新ユニフォームが完成した。
今まで使用していたものは元はといえば急場しのぎに作ったプラティクス(練習用)シャツのみ。イングランドスタイルを狙ったデザインも今にしてみれば、敗戦と屈辱だけが染み込んだ辛い想ひ出でしかない。2年目への真価を問われた妥協を厭わない新ユニフォームのデザインはモリ・ハナエ、激しい入札の末勝ち取ったメーカーはイタリアの名門ブランド、ディアドラ、さらに胸に輝くエンブレムは帯広の洋裁工場が金の糸を駆使して縫い上げてくれた職人芸の一品である。高級ジャガード折りのゲームシャツは袖口に3色(大地、太陽、解放を表す)のステッチを織り込み、普段の装いにはもちろん、ちょっとしたお出かけやお悔やみにも着ていける粋な一品である。
ただしロングタイプのサテン仕上げゲームパンツには少し注意が必要だ。流石、イタリアの種馬ディアドラ、透け透けで、このままだと大変なことになる恐れがある。各自でなまきん対策を施して欲しい。新ユニフォームのお披露目は6月12日、社団法人 北海道栽培漁業振興公社TERRA F.Cとのよさこい協賛マッチの予定だ。
 

を同じくして6月5日、大同ほくさんソフテックFCとのフレンドリーマッチが行われた。

名前から解るとおり、大同ほくさんの社内クラブチームである。コンサドーレ札幌の練習が大同ほくさんグラウンドで行われていることは、サッカーファンなら周知の事実である。しかし正規クラブであるはずの社内チームは、そこが使えずわざわざ米里サッカー場で自腹で活動しているといった、社外の人には説明しづらい訳ありのチームだ。
もうひとつ、大同ほくさんソフテックFCといえばジョッピンカルにとって忘れられない特別な相手、チーム発足後、最初に白星を献上してくれた気の毒なチームなのである。
今年は、大同ほくさんソフテックFCのフロント陣が一新、まずチーム名を変更します、といった旨の連絡が、ジョッピンカル監督、榎木津礼二郎の元に届いた。チーム変革を、まず形から行うという理念はジョッピンカルにも通じる侮れなさだ。敵に塩を送るつもりで榎木津は「ルンバ菊水」と命名してあげたのだが、もめにもめたあげくに当日は「どさんこ米オーレ菊水」という地元に密着しまくった名前で立ちはだかってきたのだ。
キックオフは夜型には辛い午前7時、両チーム最低限の集合人数でノーガードの撃ち合いが始まった。
ジョッピンカル9番、Boyanのフライングニーキックで先制するも、どさんこ米オーレ菊水のロベルトカルロスばりの距離と中村俊介ばりの弾道で狙った見事なロングループで同点、その後1点を追加するも、Boyanの2点目で同点とトルシエ(ホモ)JAPANのキリンカップより、よっぽどましなシーソーゲームが展開された。
しかし両チーム、日頃の運動不足と準備運動をおろそかにしたために怪我人続出、最終ハーフを残した段階で、どさんこ米オーレ菊水側から「もうやめませんか?」と社会人らしい提案、前代未聞の時間を残したままで、2-2のドローゲームとフロント同士の大人の取引は成立した。このどさんこ米オーレ菊水の英断には拍手を送りたい。おそらく今季、再戦がお互い無理しない程度に行われるはずだ。
 
フットボールは少年を大人に、青年を紳士にするのだ。
 
ロイター発・共同通信

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