1999.5.18(016)号

J (ジェイ)の 壁

5月16日(日)1年ぶりに芝香るホーム白旗山に帰ってきたジョッピンカル札幌。
この記念すべき日にふさわしい相手として、チーム発足初めての相手でもあり0-8と屈辱的スコアでフットボールの奥深さを教えてくれたベテランチーム、電通@ホームレスとの再戦をオファーした。しかし「その日は山菜取りだから駄目」と家族を大切にするベテランの貫禄を見せつけられた。
よって急遽、キャプテン・ドゥンガ斉藤のなはからいにより特別なカードが仕組まれた。札幌のリーグに所属する40代中心のベテランチームに練習試合をお願いしたのだ。
40代といってもライラックリーグのそのまた上のリーグ5部のベテラン、そうそうかなう相手ではない。しかしこの日は日曜日、リーグ公式戦の日である。午前中に真剣勝負を一試合を行い、午後からもサッカーをするには体力の消耗は必死だ。しかも幸いにもこの日ジョッピンカルは20人以上のメンバーが集合し、選手層の厚さと若さ(40代に比べればの話だ)と運動量に勝負を賭けることにした。
 
試合開始予定時刻は午後三時。しかし彼らは来なかった。さすがベテラン。
と思いきや、その30分後に札幌のサッカーリーグ会を熟知するキャプテン・ドゥンガ斉藤は驚愕の声を上げる事になる。
午前中にリーグの公式戦で三時からの白旗山の相手がいないことを聞いた若さと体力(もちろん技術も)を持て余した各チームのメンバーたちがわさわさとやって来たのだ。
中心になるのはダントツの成績で昨年優勝した4部リーグのJR北海道のチーム。文字通りのチームだ。例えるならJ2ならぬJFLのCチームあたりに稽古をお願いしたのに、ジュビロ磐田鹿島アントラーズ日本代表メンバーが来てしまったということになる。
 
我々には為す術があるのか?もちろん、この日のベストメンバーで尽力を尽くす事は考えられるだろう。しかしガラスの10番、榎木津礼二郎こと遠藤が試合前夜、なんの関係のないところで全治一ヶ月の右太股靱帯損傷により戦線離脱を余儀なくされるという幸いな事故があったにしても、ジョッピンカル札幌のモットーは来たメンバーがみんな出場できて楽しめる、文字通り全員サッカーである。当然、先発メンバーは厳選され選考された。サッカーに賭ける情熱の濃い順番、すなわち当日来た順番である。もっともどうしたってかなう相手ではないのだ。
 
試合はフランスワールドカップの日本-アルゼンチン戦よりアトランタ5輪の日本-ブラジル戦を思い出させた。一方的なゲームの支配のされようがそれを思わせたのではない。あの日ブラジルが決定的なチャンスを何度も外しまくったように、JR選抜チームのシュートはことごとく枠を外れた。
一方、ジョッピンカルも暇を持て余した榎木津礼二郎監督の机上の理論による必死の采配。この日は香港のダイナモ金城武不在ではあったが、G-PANと久堀の初のアタッカー2枚重ねに加え、FWのWG的起用やJUNIORのストッパー起用、敵にも味方にも危険な爆弾男BAD DOGが最終ラインに加わったときにはフラットな3バックから1トップの4バックへ修正、小手先の知恵と持ち前の運の強さで必死に持ちこたえた。
度重なるシュートミスと午前中のリーグ戦の疲れから、ボールを持たせてもらえるようになった後半、ベンチはトルシェ譲りのオカマ的3-5-2から、攻撃的3-4-3システムに挑戦。負けても何も失う物はない覚悟だ。
案の定、攻撃的システムに切り替えたのが裏目に出てカウンターから1対4の場面、ゲーム終了2分30秒前に決定的な先取点を献上した。
 
しかし、マイアミの奇跡は起きたのだ。
 
ベンチに諦めのムードと帰り支度を始めた頃、前線の相手のパスミスをG-PANが素早くカットして独走、ゴール前で冷静にディフェンダーをかわした後ラストパス、BOYANが確実にゴール左隅に叩き込んだ。
とっさにベンチでは最年長FW奥田がタイムアップを線審に要請、引き分けで終わらせようするベテランのしたたかさを見せた。結局、JR選抜のコーナーキックが最後のワンプレイとなった。「これで入れられたらどうするんだ?」なおもベテラン奥田は食い下がったが、「セットプレイからの得点なら、例え負けても完全に崩されて負けた訳じゃない」と采配を振るう榎木津礼二郎はベンチをなだめた。当然、全員自陣に引いて守るように指示だ。
最後のコーナーキックはなんとかクリアに成功、しかしそのこぼれ玉をJリーグでもなかなか見られない見事なダイレクトボレーシュート。結果1-2で終了。セットプレイ後の混乱を完全に崩されて負けた。
試合終了後なおもロスタイムが4分近くあったと線審に抗議、主審への確認を要請すると「主審は途中で帰ったよ」と草サッカーならでは悲痛な判定。
予想以上に健闘したジョッピンカル札幌。Jの洗礼は厳しかったが、相手は4部の実力者。数字上ジョッピンカルは5部くらいの実力か?と勘違いしてしまうほど今後に大きく期待を寄せられる一戦でもあった。
6日後には、U-20代表ワールドユース準優勝記念、Under20 vs Over30のカップ戦、コモエスタ白石、FSアシスとの初顔合わせが待っている。翌日には監督ダービー、フィールドオーバーシアーとのアウェイゲームだ。また29日には今期初のナイトゲーム、業界ダービー、uhb@トップクリエーションとの再戦も決まっている。8日間で4試合というJリーグ以上の過密スケジュールである、仕事に支障がないよう無理は禁物だ。
 
ロイター発・共同通信
5/19 追記情報
5/18、新たなニュースが届いた。
まず22日のU-20代表、コモエスタ白石がチームを再編、新たに「G.T.S」と名前を変えて勝負を賭けてくる。
また翌日の早朝マッチ、5/23日の監督ダービー、フィールドオーバーシアーから試合時間変更の知らせが入った。なんと2時間繰り上げで午前五時という暴力的な時間。場所は南郷13丁目あたりの東白石中学(小学校?)。
 
今回のフィールドオーバーシアー戦は今季初めてのアウェイゲーム、すなわち招待試合である。若者たちが自ら稼いだお金で学校解放のグラウンドを押さえてくれて、わざわざ我々を招待してくれているのに、その気持ちを踏みにじることができるだろうか?しかも考えても見たまえ!前回のワールドユース準決勝の試合開始時刻も日本時間にすれば午前三時、アメリカワールドカップ決勝に至っては同じ午前五時ではないか!サッカーをするには適さない時間というわけではないのだ。
この前代未聞な開始時刻のニュースを聞いたメンバーの光成がさっそくフロント事務所に怒鳴り込んできた。しかし朝七時に起きることの辛さより、朝五時まで起きている方のたやすさに納得してくれたようだ。
日曜日の朝5:00-8:00、こんな時間に参加できない事情となる予定や仕事がある戯けた人間はいない。すなわちこの日の出席はサッカーに対する情熱を計る絶好の踏み絵となるのだ。
 
ロイター発・共同通信

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