2001.8.14(054)号
希望を抱き、恐怖に震え、畏怖にうたれる。究極の歓喜があり、耐えがたい絶望がある。サッカーという冒険には、人間のあらゆる感情が凝縮され、すべての営みが投影される。だから、刻まれた記憶は決して色褪せない。

裁かれる大地。北海道- 民間vs司法 キロロカップ2001


夏の遠征試合、キロロカップも2年目を迎えた。

GWSボンバー主催で行われたこの大会、今年の参加チームは、ジョッピンカル新札幌に加えて、FC 裁判所、AS 検察庁と日本の司法を牛耳るサッカーチームの参戦だ。

大会形式もいつものライバル同士、GWSボンバー vs ジョッピンカルのカードはあえてマッチメイクせず、民間vs司法という厳しい図式を浮き彫りにしたものである。

開幕戦は、AS 検察庁vsジョッピンカル。
いやがおうにも緊張した試合開始直前、ベンチに構えたジョッピンカル榎木津代表に「検察だが、メンバーが足りないので一人貸して欲しい」といきなり威圧!
高圧的態度に一瞬、怯んだ榎木津であったが、三権分立違反にあたる違法な干渉だ、と正当かつ倫理的に応対すると、検察もあっさり引き下がった。

検察の隠蔽工作で、GWSボンバーからメンバーを借りると、キックオフ。
検察のメスがディフェンスラインを引き裂く。次々と令状無しにペナルティエリアに踏み込んだAS 検察庁。前半、一罰百戒で先制ゴールを立件。
ジョッピンカルの反対弁論も当局を脅かすことはできない。
後半も決定的な証拠物件を見つけられずに追加点を与え、結局、対 検察を0-2で落とした。

続いては、FC 裁判所戦。
球まで裁かれては、圧倒的に不利だ。
試合に先立ち、相手の心理的動揺を誘う作戦を立案したのは、インターポンチネンタルカップ初戦で自爆して左足亀裂骨折していながら、この日もキロロまで参入してベンチで傍聴していたNo14:ぜる。弾劾裁判作戦。司法に対して民間人の意地を見せる時だ。
「少女売春!」「このロリコン野郎!」卑劣極まりない野次にFC 裁判所、痛恨のメンタルブレイク。

司法の動揺の間隙を縫って、個人的に裁判所に恨みを持ったNo28:ケイトの先制ゴール。続いてNo:9ソウの追加点。守ってはセンターバックに入ったNo:25トントンが司法の追求をことごとくシャットアウト。

まあ、そもそもFC 裁判所が直前に炎天下の中、GWSボンバー戦を0-3で落とし、休む間もなくの連戦であった、というのが大きな理由なのだが、弱った相手にはめっぽう強いジョッピンカル。獅子は我が子をドブ川に落とすという(引用、獅子は一羽の兎を仕留めるにも全力を尽くす〜の間違い)圧倒的にボールを支配して前半を終えた。

だがしかし、ハーフタイム、ベンチは動いた。
ディフェンスラインを無料開放状態まで緩めようという作戦だ。
疲れ切って暑さと焦燥感を背負ったFC 裁判所の面々を見たまえ。普段の彼らの息が詰まるような職場の、その厳格さと緊張感は我々の想像を超えるものに違いない。普通のの若者ならシャブや売春をやっている頃に、司法試験の勉強をしているストイックさ。それが年に一度、このキロロまでやって来て、底辺の民間人にボロボロに痛めつけられて。
彼らの短い夏休みにいい思い出は創れるのだろうか。
眼を覚まそう。立法でも行政でもない、我々はジョッピンカルだ。もう少しで勝ちを目指した普通のサッカーチームに成り下がるところだった。

鉄壁の守りを魅せていたNo:25トントンをトップに上げ、センターバックにNo17:バッドドックを超法規的に投入。ガイア、オルテガ、マッシュの3バックをガンタンクに置き換えたようなもの、と例えて解る人は結構、通。

後半、FC 裁判所の猛攻が始まった。
最終ラインで檄を飛ばす現在任意出頭要請され中(←実話)のNo17:バッドドック
「社会的地位は低くても、志とラインは高く」そのオフサイドラインもあっさり突破。FC 裁判所がさっさと一点を返した。
さらに上告を狙うFC 裁判所であったが、シュートはことごとく枠を外れ、あるいはゴールポストを叩く。まったくもって日本の司法の詰めは甘い。
しかも証人として冒頭に喚問したNo:25トントンがオーバードライブ。情状酌量の余地もない2ゴール、ソウの追加点で結局、5-1で判決を下した。

大会終了後、検察、裁判所との合同チームとGWSボンバー、ジョッピンカルの日韓合同チームとのエキシビションマッチが行われた。
司法が手を組んだ圧倒的な権力の行使に普段のライバルチーム、GWSボンバーとジョッピンカルの日韓合同チームがどのようなコンビネーションを見せるのかが最大のポイントだ。
前半、GWSボンバー、ジョッピンカルとも親父メンバーを選出。これが裏目にでたのか司法に屈し、1点のビハインド。
しかし後半、お互い、若手メンバー同士を投入すると日韓合同チームは息を吹き返した。
戦争体験のない若手メンバー同士には反日感情も無く、ジョッピンカルNo:9ソウのセンタリングにGWSボンバーNo:11ボン平川の同点弾。GWSボンバーのアーリークロスにジョッピンカルNo:9ソウのヘッドと美しい日韓共催ゴールが連続。試合は4-1で民間人の底力を見せつけた。

この日、国境を越えて望んだ司法の改革。
まったくもって、改革には痛みを伴うものだ。

ロイタ一発・共同通信

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